魁!!男塾の『民明書房』で一番だまされてしまう逸話を決める。
今回はその⑤、『天挑五輪大武會』の予選、狼髏館戦と淤凛葡繻十六闘神戦で登場した民明書房。
①はこちらから。
前回はこちらから。
誰もが騙されてしまう『民明書房』はどれだ?っことで、今回も引き続きやっていきます。
今回から『天挑五輪大武會』に突入、より濃厚な『民明書房』が登場します。
髭をむしられた哀れなディーノの姿が記憶に新しい。
では、今回もはじめていきましょう。
例によって、多少端折りながら進めます。
また、民明書房以外の出版社もひっくるめてやります。同じようなものなので。
“借金で首がまわらない”『辮締旋風大車輪』
『辮締旋風大車輪(べんていせんぷうだいしゃりん)』。
民明書房刊『中国拳法大武鑑』より。
天挑五輪大武會予選二回戦。
狼髏館の鎮獰太子がみせた技だ。
男爵ディーノを髪の毛だけでボコボコにしたヤツ?
いやボコボコにされてねえし!
髪の毛だけで宙に振り回されたあげく、脳天を地面にたたきつけられただけだから!
より無残!
“中国清代初期、辮髪の習慣を活用した幻の拳法。修行には重さ100貫20寸角の雫鋼鉄を吊るし、頭髪と首を鍛えたという。最低3個の雫鋼鉄を持ち上げ、自在にふりまわすだけの技量が要求された。ちなみに、「借金で首が回らなくなる」という表現は、当時非常に高価なため修行を断念した者がいたことに由来する”。
初っ端から濃厚ですね。
「借金で首がまわらない」は普通にいいますよね。
いうね。”魂剣石をも斬る“とは違うよ。
でた!”魂剣石をも斬る“!
民明書房オリジナルことわざ。
今回は実在する慣用句の語源でしかけてきた新しいパターンだ。
気になるのは雫鋼鉄(だこうてつ)よ。
ただでさえ100貫があんまりピンと来てないのに、さらに聞いたことない鉱物。
100貫は375キロだって。だから約1トンの雫鋼鉄だよ。
本当にあんのかなあ?雫鋼鉄。
別に雫鋼鉄じゃなくてもよさそうだけどね。高いらしいし。
amazon で検索しても出てこないですよ。雫鋼鉄。
モノタロウじゃない?
モノタロウっぽい!
いや、ないですよ!あぶない、騙されかけた。
独眼鉄を折りたためる『翔穹操弾』
『翔穹操弾(しょうきゅうそうだん』。
民明書房刊『知られざる秘拳』より。
狼髏館館主、宗厳領のチート技。
これで独眼鉄は肉体をバキバキにされ、折り畳み式携帯用無眼鉄と化した。
とにかくひどい目にあったんですね。
“漢方医学を応用した拳法。長さ5ミリほどの銀製の礫を打ち込むことによって、人体の筋肉組織の結節を刺激し、その腱反射で相手の五体を自由自在に操った。この技を完全に会得した者は、中国拳法の長い歴史の中でも三人とはおらず至難の業とされている“。
めっちゃ難しいんですね。
三人もいないってことは、あともう一人しかいないってことですよね。
それが男塾一号生剣桃太郎。
世界が狭いなあ!
ちなみに雷電は『翔穹操弾』のこと知ってたからね!
この『知られざる秘拳』を読んでたんじゃないか。
雷電はホントなんでも信じるなあ。
でも、これは雷電以外は騙されないですよ。
“毛利三綱の情”『拗託生の行』
『拗託生の行(ほうたくしょうのぎょう)』。
民明書房刊『戦国武将人情譚』より。
独眼鉄が折りたたまれたのを受けて、男塾塾長江田島平八がおこなった行。棘天井のある房にこもり、塾生が死亡するたびに棘天井を支える綱を切断する。
黒ひげ危機一髪だ。
“戦国時代屈指の名将といわれた毛利元就が天下分け目の砥石が原の合戦の折りに、戦場に送り出した隆元・元春・隆景の三人の息子と危険と苦しみをわかちあい戦勝を祈願するため、中国秦代の韓信将軍の故事にのっとりおこなったのが最初とされる“。
毛利元就じゃないですか!
今回登場する毛利元就、隆元、元春、隆景、そして韓信は全員実在した武将。
『爆挺殺』にでてきた豊善長友の守定兼や黒羽行康みたいな謎の武将とは違うね。
そいつららは、『信長の野望』のオリジナル武将で作りたいですね。
気になるのは、砥石が原の合戦よ。
そもそも毛利元就の戦いって、『厳島の戦い』ぐらいしかピンとこないでしょ。
信長とか信玄とかと比べると、対戦相手の知名度が落ちますしね。
その信玄が村上義清に敗れた砥石城の戦い、通称『砥石崩れ』はあるね。
うわっ!それと関ケ原の戦いを合体させたんだ!
あぶね!騙されるとこだった。
“ちなみに、現代でも使われる親がわが子を思う気持ちの強さをたとえていう「毛利三綱の情」とは、これより発する“。
出たよ!ことわざ!これはどっちだ?
さっきの「首がまわらない」は実在するしな。
どっちだと思う?
毛利三綱の情か…
実在する!
しません!
チクショー!
三本の矢になぞらえたんだろうね。
たださ、三本の矢も創作でしょ?でもいい言葉だよね。
だから、創作でもいい言葉でも使っていいと思うんだよ。
“毛利三綱の情”を使っていくんですか!?
「はあ?」ってなるでしょ。
いや、意外に言われた方もスルーすると思うよ。シッタカもあるかもしれない。
ちなみに、塾長は大会終わるまで”拗託生の行“をやってたんですか?
いや、決勝トーナメント進出したら止めてたね。
“毛利三綱の情”がたりないなあ。
ABC兵器を凌駕する『攪音波催眠』
『攪音波催眠(かくおんぱさいみん)』。
民明書房刊『大衆操作暗黒史』より。
淤凛葡繻十六闘神の贅魅爾(ジェミニ)が使った竪琴による催眠技だ。
”音の波長が人間の脳に与える影響を利用した一種の催眠効果。音の周波数を変化させることにより、脳の前頭葉を刺激し変化させることにより脳の前頭葉を刺激し、さまざまな幻覚状態を現出し相手の精神をも自由自在にコントロールする。ちなみに、現代ではABC兵器を越える未知の威力を秘めた戦闘法として、米ソ間で開発競争が行われている“。
なんか難しいな!
ABC兵器ってなんですか?
Atomic 、Biological 、Chemical の略だって。
核兵器、生物兵器、化学兵器だ。
それはあるんですね。
この手のはさ、電磁波攻撃とか人工地震攻撃とかを信じておられる方々がいらっしゃるので、触るな危険ですね。
次、行きましょ。
攣鵠蝙蝠20匹『乖宙浮遊體』
『乖宙浮遊體(かいちゅうふゆうたい)』。
民明書房刊『世界の怪拳・奇拳』より。
あれ?『世界の怪拳・奇拳』って、たしか前回も結構でてきましたよね。
今回は『乖宙浮遊體』、蝙翔鬼がみせた南朝寺教体拳の技だ。
出た!外道先輩、蝙翔鬼!
てか、鎮守直廊三人衆が多いな、『世界の怪拳・奇拳』!
鎮守直廊三人衆言えますか?
ニンニクいれますか?みたいですね。
独眼鉄、蝙翔鬼、男爵ディーノ!
はい。続けますよ。
“中国河南省山奥に生息する攣鵠蝙蝠はその揚力が5kgもあるといわれる。元朝中期、青巾賊の乱の折り、元軍の都尉・安史明は、この蝙蝠20匹を使い万里の長城を越え、敵を攪乱することに成功したという。これを応用し、多彩な変化球を加えて成立したのが乖宙浮遊體であり、怪拳として世におそれられた“。
三国志で有名なのは、黄巾賊の乱、元朝末期に起きたのは、紅巾賊の乱。
そしてここで出たのが、元朝中期の青巾賊の乱。
青巾賊の乱は実在しないんですよね。
さっきの”砥石が原の戦い”みたいな史実に寄せるパターンか。
元軍都尉の安史明は、安史の乱を起こした安禄山と史思明のハイブリッドだね。
問題は、”攣鵠蝙蝠(れんこくこうもり)20匹“だよ。
聞いたことないですね。そもそも蝙蝠の種類なんて知らないし。
攣鵠蝙蝠20匹いれば万里の長城超えることができるとのこと。
めっちゃ目立つよ!弓矢を射られておしまいだし。
さすがに実行するのは夜だろ。
ただ、蝙蝠って頭いいのかね?。20匹を同時にあやつるのは至難の業だぞ。
練習時間は相当必要だと思う。
蝙蝠飛行の練習に時間を費やしてたら、拳法の腕が落ちるでしょ。
蝙翔鬼は、この戦いでどうなったんですか?
蝙蝠を燃やされた挙句に死んだよ。
しかも、その相手だった搴兜稜萃(ケンタウロス)は、乗馬という至って普通のスタイル。
奇をてらったほうが負けたんだ。
やっぱり蝙蝠飛行の練習してる暇あったら、拳法の修行をしてたほうがよかったんですよ。
奇拳身を亡ぼす。
辵家『纏欬針点』
『纏欬針点(てんがいしんてん)』。
民明書房刊『中国拳法修行大鑑』より。
蝙蝠を燃やした搴兜稜萃対月光の試合で月光がみせた神業。
先っちょに先っちょをあわす。
すげえ。
ストリートファイター3のブロッキングみたいだ。
“その語源は、動いている針と針の先端同士を合わせることにあり。人間のもつ動体視力と精神集中力を極限にまで鍛え高めた時、初めてできる見切り技。地上10mの高さから、下面中央に鉄針のついた岩を落とし、口にくわえた鉄針で受け止めるのが練習法である。最初は5kgの岩から始め、徐徐に重さを増やしていき、これを会得したというには、300kgの岩を受けとめることが出来ねばならない“。
まず練習環境をととのえるのがハード。
10mですからね。初回の5kgですら頭に当たったら死にますよ。
落とす方も技術が必要だ。
針つきの岩を作るのも大変だよ。
発注するにしても5kg~300kgまで必要だからね。
何キロごとに用意するのか知らんけど金かかるよ。
10mがなくて、どうかってところですね。
もしかしたら騙されたかも。
ケッペルの法則『無明察相翫』
『無明察相翫(むみょうさつそうかん)』。
民明書房刊『中国拳法 – その科学性 – 』より。
続けて月光の神業。
天高く投げたモノが必ず相手の頭上に落ちてくる。
ド級のチートですね。
そんなことが可能なんですか?
可能です。
それをこの民明書房刊『中国拳法 – その科学性 – 』が説明しています。
“中国三千年最大の秘技。その特色は、現代でいう行動心理学のケッペルの法則を応用し、相手の動きを完全に予測することにある。ケッペルの法則とは、人間がある一定条件下で心理的圧迫状態に陥った時、年齢・性別・知力・体力・性格にかかわらず、全て同様の行動をとることをいう。迷路にネズミを放し、ある刺激を与えると全てのネズミは同じ順路を通り逃げ回る“。
理解できましたか?要は、”ケッペルの法則“です。
ケッペルの法則!またありそうな名前だな。ドイツ人学者っぽい。
このネズミの迷路実験なんて、実際に行われたことあるだろうしね。
メンタリズムの人も”ケッペルの法則“使ってるんでしょうね。
使ってるだろうな!
って、これ民明書房だからね!騙されないように!
これは危ない。もうどこかで話したいよ、”ケッペルの法則”。
やめろ、そんな馬鹿なこと『蛇血誓闘』
『蛇血誓闘(スネークブラッドコントラクト)』。
太公望書林刊『エーゲ海 – 古代格闘史の浪漫 – 』より。
淤凛葡繻十六闘神・主神、聖紆塵(ゼウス)
対
男塾の帝王、大豪院邪鬼との戦いで行われた決闘法。
邪鬼の相手の当て字はひどいですね。
主審・聖紆塵(ゼウス)だからね。
歌舞伎町のホストでギリ名乗れるかってとこだよ。
“古代ギリシャのコロシアムにおいて因縁のある相手と完全決着をつけるために行われた決闘法。ギリシャ格闘士史上最強の勇名を競い合っていたヘドビウスとダビウスがミロス王の発案により行ったのが最初とされる。ちなみに、あまりに有名なギリシャ特産のシラキューズ酒にはグリーク・ティナコンダの血が入っており、男たちが景気をつけるときにこれをまわし飲みする風習はこれに由来する“。
ギリシャ風固有名詞がたくさん出てきたね。ヘドビウス、ダビウス、ミロス王、シラキューズ酒、そしてグリーク・ティナコンダ。
また、それっぽいなあ。ミロス王とかいたような気がしますもん。
で、これどんな決闘法だったんですか?
このグリーク・ティナコンダっていう遅効性の毒をもった毒蛇を両者に咬ませ、勝者のみが解毒剤を手に入れられる。
なんでそんな馬鹿なことをするんですか?。
富樫源次や虎丸龍次も言ってたよ。「やめろ、そんな馬鹿なこと」って。
ただね、帝王がね。
あぁあ。
ノリがいいんだよ帝王は。
さて、先ほどのギリシャ風固有名詞たち、これらはぜ~んぶありません!
全部ですか!史実ミックスパターンじゃないんですね。
そう、男たちがシラキューズ酒をまわし飲みする風習もありません!
ただ、このシラキュース (Syracuse) って地名は、ニューヨークにあるみたいよ。
また、シラクーザ (Syracuse) って地名が、イタリアのシチリア島にもあるみたい。
こうやって寄せてるから、ややこしくなるんだよなあ。
これは騙されてしまうかもしれない。
でも、なんでこんな馬鹿なことするんだろう?って疑問に思えば、騙されずにすむかもしれない。
教訓をえました!
疑問に思うことが騙されない秘訣!
脂肪を溶かす『ベラミスの剣』
『ベラミスの剣(つるぎ)』
太公望書林刊『ギリシャ神話に見る現代人への教訓』より。
ギリシャ風味が続きますね。
てことは、また聖紆塵(ゼウス)関連ですか。
ご名答。そして、先ほどから続く太公望書林だね。
“古代ギリシャ神話時代、永遠のライバルといわれた闘いの神、ベラミスとマルスはその実力において全く互角であり、幾多の死闘を経ても決着はつかなかった。ある時、マルスは一計を案じ、試合前密かにベラミス愛用の剣をそっくり同じ形ながらほんのわずか重い剣に取りかえた。それと気づかぬベラミスはふだんよりわずかに重い剣のためおくれを取り敗れ去った“。
マルスっていませんでした?
『蒼き神話マルス』って競馬漫画もあったし。
『蒼き神話マルス』あったわ!マガジンだよね?懐かしいわ。
マルスはローマ神話の神様で、ギリシャ神話でいうアレスらしいよ。
なにそれ!?じゃあギリシャ神話のマルスはいないんだ!
新しいパターンですね。で、ベラミスは?
漢方薬が出てきた。
ベラミスの漢方!
ギリシャ神話三大悲劇。
イカロスの翼、アキレスの踵、そしてベラミスの漢方。
いやいやいや!
一人だけ健康になっているじゃないですか!
イカロスは蝋を溶かし、ベラミスは脂肪を溶かす。
健康の神ベラミス?
しかし、これは騙されますよ。
さっきの馬鹿な決闘法と違っておかしなところがない。
ベラミスって聞いて「それ漢方だろ!」ってならないしね。
見事な民明書房だわ。
今回のベスト騙され民明書房とワースト騙され民明書房
さて、以上『天挑五輪大武會』の狼髏館戦と淤凛葡繻十六闘神戦で登場した民明書房でした。
結構、濃厚だったね。
今回は難しいですね。
ただ、ケッペルとベラミスが頭一つぬけてましたね。
ケッペルの法則の『無明察相翫』ね。
じゃあ、『無明察相翫』に決定しよう。ケッペルの法則のインパクトが強かった。
ワーストは?
蝙蝠でしょ。
⑥につづく。
出典:集英社/宮下あきら/魁!!男塾
コメント
「シラキューズ」は、たぶんイタリアの「シラクサ(シラクーザ)」が元ネタじゃないかと思います。
しかも、シラクサがあるのはイタリア最大のワイン生産地のシチリア州なんですが、シチリア州といえば…
そう、イタリアにおける男の中の男「シチリアンマフィア」でお馴染みのシチリアなんですよね。
大人になってから気付いて、作り込みの細かさに震えました笑